A deadline 人間は、大体、平均寿命が女性で85歳位だそうだ。 でも・・・。 サラは、あと3年。 タイムリミット。 今はまだ15歳。 じゃぁ、サラは18までしか意識あっての生がない・・・? 残酷過ぎるだろ・・・? もしも・・・ 神サマが居るのならば・・・ サラを助けてやって欲しい。 それじゃさ、何もしない、 ただの愚像・・・だろ? もし居るのなら、 奇跡を起こしてくれ。 サラに真っ当な人生を・・・ 返してくれ・・・ ______________________________________________________________________________________________ がたんっ。 「お・・・おわぁ!?」 「おはよ。 ・・・どうしたの?」 列車ががくんとスピードを落としたため、座席がかなり揺れたのだ。 おかげで長椅子一つ占領して眠っていたのに、とんだ目覚まし時計だ・・・。 苦々しく舌打ちしながら座り直す。 「どうしたの?ヤツレタ顔して?」 「・・・イヤな夢を見ただけだ・・・。所で、今のは?」 「あぁ・・・列車の減速。 アナウンスで、手すりとかもって下さいって散々言ってたのに、起きないんだもの」 「・・・ ・・・」 「よっぽどぐっすり眠り込んでたんだねー」 あはは♪と楽しそうに笑うサラ。 自分の方が、自分のコトではないのに、やつれている。 知らないからこそだろうけど・・・。 教えるのも、ためらわれる。 「疲れてたんだよ・・・」 「じゃぁ、博士のトコロで寝れば?」 「そんなの別にいいからさ。 お前、なんか具合とか変じゃないか?」 「?・・・別に」 「ならいいんだけど・・・」 アナウンスがはいる。 『まもなく、フェセィニア王の治める町、ティスラニーに到着します』 ____________________________________________________________________________________________________ コンコン サラが軽くノックする。 ぱたぱたとスリッパ(?)の音。 がちゃりと扉が開いた。 「サラ!ディルディス!お久しぶりですね♪早く家に入りなさい♪」 機嫌良さそうな、博士の満面の笑みを早々に見ることになった。 _______________________________________ってコトなんですけど・・・・『カティテル』の使い方、分かりましたか? バルヴェーが言う。 大体はね。とサラ。 ・・・何となく。とディルディス。 サラは手元でかちゃかちゃといじっている。 ディルディスは変な形・・・とたたいたり・・・。 「・・・ぁっ!そうだった!博士!このアザみたいな、刺青みたいな痕、なんだと思います?」 さらがネックシャツをずらして左首筋が見えるようにする。 「・・・うーん・・・なんでしょうね?サラは彼氏居ないですよね?」 「・・・?なんで彼氏?」 「まぁ、色々と♪」 妙に楽しそうに。 「ちょーっと待て」 ディルディスも乱入(?) 「博士、まさか18禁的なコト、考えなかったか?」 「ははは♪ご名答♪」 「こんのエロ博士っ!!!」 「あはは♪男はみんな下心はあるモノだよw」 ディルディスの雷の能力者下段技『メタル・ホリック』(雷の玉)を軽く避けながら言う。 対象物をなくした『メタル・ホリック』は壁に見事にめり込んでいた。 「ご・・・ごめん・・・」 「まぁいいよ。あとで錬金術で修復しといてね?」 「おぅ・・・」 後ろでバシィッと音がすると、綺麗に修復されていた。 サラに向き直る。 「さて・・・コレがあっち(18禁)的なモノではないとしたら・・・。 呪いだね。それもとても強力な」 「ぇ・・・?」 固まる。 呪・・・・い? 「どんな呪いなんですか?」 唇を噛み締めながら言う。 「死んでしまったり、腕が取れたりするとか・・・?」 「いや・・・もっと酷い呪いだね」 「そん・・・な」 「この呪いは、記憶消去呪文と魂縛りが絡み合って作られている」 「記憶消去?魂縛り・・・?最悪の呪文と恐れられた、幻の呪文ですよ・・・?」 「それが、その刻印だ・・・・。堕天使の刻印」 首筋に寒気が走る。 「私、あとどのくらい、意識あって生きられるんですか・・・?」 「それは、彼が一番知っている・・・ね?ディルディス?」 ディルディスの動きが止まる。 「な・・・なんで俺なんだよ・・・?」 「間近で聞いていたハズだ。知ってても、恐ろしくて言えなかったんだろう?」 「な・・・で・・・・」 声が震えていた。 「・・・ぇ?」 「なんで、言ってくれなかったの!?」 「辛い思いするだろうと思って・・・」 「私は・・・言って欲しかった!」 「ごめん・・・」 「サラは、あとどれくらい意識あって生きられるんだい?」 「3年・・・タイムリミットはあと・・・3年・・・」 「本当に?」 「ホントだよ・・・」 サラも、ちゃんと聞いてくれるかい・・・?」 優しくバルヴェーが言う。 こくんと頷く。 「3年の間に、呪いの解除は難しい。だから、3年間、サラは精一杯生きなさい」 「!?」 「もしくは、精一杯、呪いを解くことに・・・打ち込むか」 「・・・ ・・・」 「これは、君が決めることだ。サラ。君の人生。君の体。君の魂・・・すべて、君のモノだから・・・」 「・・・・・・します」 「・・・なんて言ったのか、聞こえないよ?」 「呪いを解きます・・・だって・・・ どうせ、精一杯生きても、レフィトに連れて行かれるんですから。 ・・・博士、ディルディス・・・鎖に縛られても操り人形になっても・・・生きていたい・・・? 私だったら、死んだ方が良い!記憶もないまま生きてたってしょうがない!」 「じゃぁ、がんばれるね?」 「はい!」 「教えなくって・・・ごめん」 「私も・・・怒鳴ってゴメン」 __________________________________________________________________________________________________________ 「問題が一つあるんだけど・・・いいかい?」 「「?」」 「サラ、君はこれから呪いを解くために、五大元素能力者の血液を集める」 「・・・?それがどうかしましたか?」 「きっと、集めにくいように阻止しようとするだろう」 「「・・・・・・」」 しばらく沈黙。 「あと、発作には、気を付けること」 「発作?」 「そう。発作」 「3年間、君に何もせずにいるワケないからね・・・ きっと何かしてくる」 「例えば?」 サラが訊く。 「う〜ん・・・例えば・・・印が焼けるように痛むとか・・・悪い夢を見るとか・・・心臓が痛むとか・・・ 酷くいくと、魂の中にまで侵入されて、魂を壊される」 息を飲んだサラを見て、 じゃぁさ。とディルディスが口をはさむ。 「その、魂の中への侵入って、拒めないモノなのか?」 「難しいだろうけど・・・。サラの魂の強さと、精神がどれだけ耐えられるかだね・・・ 精神を傷付けはしないだろうけどね・・・」 「なんでだよ?」 と、ディルディス。 「だって、彼女(サラ)は、生きたまま欲しいんだろう?人間も、動物も、『肉体=精神=魂』と こんなふうに繋がっている。精神は、蝶番(ちょうつがい)の役割を果たしている。 もしも、精神が外れるか壊れるかすると、人間は死んでしまうからね」 なるほどな〜・・・。と頷いたディルディス。 横で居心地悪そうにしているサラ。 考え込んでいるバルヴェー。 「じゃぁ、博士。私は少なくとも殺されるコトはない・・・と?」 「99%保証するよ」 「残りの1%は?」 「ん?万が一の時ね」 「なんか悲しいよ。それさ」 オレンジジュースを飲みながら言う。 そうと決まれば・・・とバルヴェーがソファーから立ち上がる。 「?・・・何しに行くの?」 「これから、バンパイア達と、接触する機会も増えるだろ?僕は今からその対策薬作りに励むとするよ」 「博士」 サラが書斎に向かったバルヴェーに声をかける。 「ありがと。ごめんね。色々と」 「いいよ。こっちの研究費、王様がくれてるから」 あはは♪と機嫌良さそうに笑う。 ホントは辛いのに。 無理しすぎ。 おやすみ♪と軽く手を振るバルヴェー。 自分もふりかえす。 ____________________________________________________________________________________________ ばたんとベットに倒れ込む。 私はあれだけで疲れちゃった。 博士はもっと疲れているハズ。 ・・・はぁ。 ため息。 外の星がキラキラしてて、綺麗だな・・・。 あと・・・3年。 私は、3年以内で呪いを解く。 出来なければ、何もかも無くなる。 今日はディルディスとは別の部屋。 しばらく、一緒に寝てたから・・・。 少し、寂しいような。 ・・・・・・。 あの人は・・・レフィトはなんで・・・。 私なんかを? 別に他の誰かでも、良かったのだろうから。 まったく、理解できない。 うとうと・・・とまどろみはじめる。 まぶたが、重くなっていく。 「・・・・・・死んでたまるか・・・」 死ぬ気なんて 「生き残ってやる」 さらさらないけどね・・・ 「必ず」 操られるのもイヤ 「呪いなんて、解いてやるっ・・・!」 心地よい眠りの海へ。 今は、ゆっくり眠ろう。 ____________________________________________________________________________________________ 決意。 覚悟。 魂の鼓動を。 そして__________________ 真実を見極めろ__________________________