「ディルディスのへたくそー!!!」

「悪かったなっ!へったくそでっ!!!速くて当たらねーんだよ!!!」

「・・・此処で兄弟ゲンカして、俺はほっときっぱなしかよ・・・」

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ひょいひょいと避けていくレフィトにいい加減ムカついてきたらしい、サラとディルディスは・・・。

「あのさ!なんでそんなにヘッタクソなのかなぁ・・・?」
「んなコト言うなら、お前がやれー!」
「あのねぇ!私さっきから、リベロでどっちもやってるんだから!ディルディスがやりなよっ!?」
「あ゛ぁ゛ーっ!!!もうどうでもいいっ!!!」
「良くないって!?」

敵に集中しろとツッコミを入れたくなるこの戦場で、一人は余裕で、二人は歯がみしながら。
相手を睨んだ。
ついにサラが本気でキレたらしい。瞳の色が珍しい澄んだブルーから、血のような真紅へと変わる。
「〜〜〜〜っ!もういい・・・私がやる!」
「ふぅん・・・?選手交代か・・・。まぁ、ちょうどいいや」
「何が『ちょうどいい』のか知らないけど・・・。ディルディス!ちょっとヘバルコトやるよ!ケリがつかない!」
「うぉ!?マジかよ!?失敗したらあの世行きだぞ!?」

;レフィトの回し蹴りを右腕で潰しながらサラが続ける。

「早くっ!」
「分かった!時間稼げ!」
「OK!」

ディルディスが踵を返す。地に手を付けて、目を閉じる。
魔法陣を想い浮かべる。ディルディスの手の付いた所から、ゆっくりと青白い光が漏れる。
一斉に広がっていく青い光の糸は細かい魔法陣が地に描かれる。
それはとても巨大な魔法陣だった。

「何しようとしてるか知らないけど・・・気を付けた方がいいぜ?」

ヒュン

と軽い音。つぅ・・・と頬に温かいモノが流れてゆく。




時が止まったようだった。



レフィトはニッ・・・と不敵に笑う。
サラが状況を確認するまでは手を出すつもりはないらしい。
拳で拭う。手に付いていたのは------------

「・・・っ!?血!?・・・一体何をした!?」

スッっとポケットから取り出したのは-----------
銀のトランプ

「コレの事か?痛くなかったろ??」

蒼い月の光に照らされて、鈍く光る。

「・・・・・・っちぃ!」

盛大に舌打ちすると、背中の槍入れから、槍を取り出す。

「へぇ?まだ抵抗するのかよ?」

レフィトも手刀で対抗する。
サラは腕に力を込める。戦いながら呟く。

"我が内に眠りし風の力、今、目を覚まさん!"
槍に魔力を纏わせる。当然のこと、レフィトは後退していく。
別に倒さなくてもいい。この事態を回避しなければ。
でも出来ればココでトドメを刺さなくては___________________

魔法陣の所まで後退させる。

「これでトドメっ!」

槍が左肩にHITする。

ぐらり・・・とレフィトの体が揺れた。

しまった!という顔。

蒼い光が辺りに舞う。

鮮血が宙を舞った。


「死ん・・・だ?」

「あれだけ余裕噛ましてたからな・・・油断出来ないぞ・・・」

その突如だった。

サラの体が浮いた・・・一瞬遅れて激しい圧迫のような不快感。
体に巻き付いている鎖。側にあった教会の白い柱に括り付けられていた。
ジャラン・・・と金属の擦れる音が耳をくすぐる。

『この程度じゃぁ、俺は死なないぞ・・・?』

「・・・・・・!?」

僅かに頬や腕などから血は滴っているものの、致命傷ではなかったらしい。
楽しそうに目を細めて、口の端を持ち上げて笑う。

『残念だったな?悲運を辿るなんて・・・な』

「       ! 」

声が出なかった。何故生きてる?
確かに成功したはずの魔法を受けてもなお生きている。
なんで・・・っ!?

ディルディスの声が聞こえた。
やめろ!と叫んでいる。
殺されるのか・・・。
鎖を外そうと腕を必死で動かす。
死にたくない。
生きていたい。

目の前でレフィトがしゃがむ両腕で、包み込むように抱きしめられる。
鉄くさい匂い。
冷たく、鋭い牙。
サラの白い首筋に顔をうずくめる。
一瞬時が止まったようだった。
首筋から、全身を伝うような激痛が走った。
まるで焼き付くような痛みが。
烙印を押すための焼きごてを当てられたかのような。
意識が遠のく。
目の前が白い雪のように覆われて。
漆黒の闇色が、視界を埋め尽くした。
睡魔のような。
眠りへ。

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何かが、弾け飛んだような。
そんな錯覚に囚われる。
目の前で起こっている事が現実なのかも判断が出来ずにいる。
聞き慣れた声。
見慣れた背中。
瞳の色。
髪の色。
___________今は、色あせて見える。
助ける事も出来ずに、ただ見ているだけだなんて。
俺はバカだ。
早く、早く・・・動け俺の体っ・・・!!!

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やっとの事で呪いを打ち込むことが出来た・・・。
あとは・・・。
時が満ちるまでの、ラスト・ロンドを楽しませて貰おう。
タイムリミットは、3年間。
3年経てば俺のモノ。
それまで。
お前はどうするか。
兄として。
見せて貰おう。

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「・・・お・・・お前っ・・・!」

「・・・・・・」

「一体何をした!?」

「タイムリミットまで、あと3年」

「!?」

「サラが、俺のモノになるまでの期間だ。3年経てば、呪いが発動して、サラはすべての記憶を失う」

「なっ・・・!?」

「勝負しろ。どちらが兄に相応しいか」

「お前はサラの兄じゃないだろ!」

「お前も違うだろ?ディルディス・ライタリー?」

「なんで知ってる・・・?」

「当たり前だろ?俺は死んだサラの兄だからな・・・。蘇ったんだよ」

「・・・・・・」

「いいこと、教えてやるよ」

「・・・?」

ディルディスが眉をひそめる。

「呪いの解除方法が、一つある。五人の五大元素能力者の血液を混ぜたインクで解除陣を書いて、発動させろ」

「なんで教える・・・?お前にとっては不利だろう・・・?」

「この勝負、勝つ自信、あるからな」

レフィトがディルディスを睨んだ。
真っ直ぐに。
真紅の血の色。
この色は、どこかで見たことがある。

「3年後に・・・な」

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それだけレフィトが言うと、急に突風が吹く。
頭の中がぼうっとしている。

『タイムリミットまで、あと3年』

蘇った声。
アイツは、タイムリミットは3年後だと言っていた。
つまり・・・。
サラには、3年しか自由な時間が残されていないって言うのか・・・?
残酷すぎる悪魔は、あざ笑いを浮かべていた。