「あー、さっぱりしたー」
長い髪をタオルでふきながら言う。
「なんでそんなにフロ好きかなー」
ディルディスがサラを覗きながら言う。
「だって、不衛生じゃない!」
「・・・・・・・・・」
(そんなに、一日位、不衛生までは・・・・・・!)
心の中で、反論を呟くディルディスにサラがバクダンを落とした。
「血だらけ、泥だらけなんて、汚いでしょ?」
「そんなにじゃないだろ・・・?」 ←(反転してください。)
↑と言ったが、サラには、息の抜けるような声しか聞こえていなかった。
「ん?なんか言った?
ディルディス?ねえ?」
兄のディルディスが何がぶつぶつと呟き縮こまっている。
さっきなに言ったのー?と繰り返し訊くサラに降参してしまったのか、ゆっくりと、そして
ふらふらと立ち上がった。
「ん?ねーなんて言ったのー?教えてよー?」
「兄ちゃんは、降参だ・・・」
「へっ?」
「フロ入って来る」
出ていってしまった、ディルディスの背中を見送ってから、サラはぶつぶつと、
呟き始めた。
「んー?どうしたんだろ?おなか痛かったとか?」
良い考えが浮かばず、そのまま瞼が重くなった。
疲れて、眠くなるのにも、合点が行く。
なにせ、サラ達が戦ったのは、一人あたり、50人。
疲れて当たり前だ。
ここは、ディルディスの部屋のベットだが、眠ってしまっても、怒られはしない。
朝起きればどうせ、『柔い炊き枕にさせてもらったー♪』とかなんとか言うんだから。
このまま、眠っちゃえー!とばかりにディルディスのふかふかのベットに潜り込む。
うっすらとタバコのにおいが付いている。
タバコの煙や、においは、なんだか慣れない。でも、ディルディスのは、特別だ。
嫌じゃない。
『ベット、半分拝借v』
えへへ、と嬉しそうに笑うと心地いい眠りの海に落ちた。
「あーさっぱりした。サラー、アイスあるぞーっ・・・て」
手にバニラとチョコのアイスを持ったディルディスが、固まった。
すやすやとサラが眠ってしまっている。
「お前、俺のベッド好きだなー・・・」
前髪をはらってやり、くしゃりと頭を撫でる。
にっこり
・・・・・・・・・・。
今、俺に向かって笑った!??
眠っているサラは、何も知らなかったが、兄のディルディスが喜んでいたことは、言うまでもない。
小鳥の歌が聞こえて、いつもの朝がくる。
明るい、そして優しい光が、厚めのカーテンを通り抜ける。
「ふぁぁー・・・」
ちなみに、言うのを忘れていた事がある。
ディルディスはバンパイヤなので、光に当たると灰になっちゃう!・・・・なんて心配している人もいるかもしれない。
でも、心配はいらない。
純血のバンパイヤのため、朝に弱いだけで、灰になってしまうなんてことは、ありえない。
並のバンパイヤなら、灰になってしまうが・・・・。
「起きてー・・・ディル兄ー・・・」
ディル兄というのは、あだ名で、プライベート(?)の時だけそう呼んでいる。・・・・・・ある意味レアかもしれない
起きろーと寝ぼけながらサラは、ディルディスの体をゆらすが、やはり、朝に弱い・・・。
「ん__________。あと一時間_______________
」
「長っ!早く起きなよー・・・朝食抜きにすっ・・・・ってうわーーっ!!??」
ディルディスがサラをベッドに引きずり込んだ。
「うるさい。サラ・・・・・・」
「なに言ってんの!?今日は、仕事あるのよ!遅れられないから、早くお・き・ろーーーー!!!!」
怒っている、サラとは反対にディルディスの濃い青の目は眠たそうだ。
「ふぁー・・・、約束・・・八時半だろう・・・?なんでこんなに早く・・・」
「万が一、遅れるようなことがあったらどーするの?よくよく考えてよ・・・・」
ただ今、六時半大丈夫そうだが・・・。
「早く起こしすぎたから、お仕置き」
眠たそうだったディルディスが、覚醒したようだ。
なにする気?とばかりにサラは怪しんでいる。
「腹減った・・・」
「・・・・・・つまりは?」
「一ヶ月たったろ?ちょっとだけ・・・」
「痛いしなぁ・・・少しだよ?私、痛いのやだから」
もちろんのこと血はディルディスの生きるための『薬』のようなもの。
一ヶ月経つと喉の乾きが醜くなるらしい。
「はい。・・・・痛くしないでよ?」
「了解」
サラの右の人差し指から少し血を啜りながらディルディスが言う。
「なんの依頼だ?」
「あいちちち・・・。痛いって、ああ、依頼の内容?」
「そうだけど・・・」
牙を抜きながら、ディルディスが答える。
「痛っ!!!痛くしないでって言ったよ?」
「ごめん」
「なんか、妙なヤツがうろつき始めたらしくってさ・・・そいつ感染型バンパイヤ。
ちなみに、そいつに咬まれたヤツが、けっこういるみたいだよ。昨日のリリータも、そうかもしれないね・・・」
「ふぅん・・・それで?どうするんだ、ソイツ。狩るのか?」
「うん、出来ればね。・・・・・・でも、相当強いヤツだよ。大の大人の男性を、20人ほど簡単に殺害したんだってさ」
「うへぇ(汗」
いくら何でもやばいだろ!?ソイツ!!とばかりなオーラがディルディスから漂ってきているが・・・。
しょうがないでょう?とばかりにサラが、肩を竦める。
「なんでも、狙っている対象は、やっぱり、弱い女性と、子供達ね。だから・・・」
さ ぁ ぁ ぁ ・ ・ ・
「これでどうかな?」
「・・・・・・ホント変身術得意だなぁ・・・お前・・・」
「そうかなぁ・・・?僕は錬金術とか、体術とか、剣および、槍、銃なども得意だよ?」
誤解されてしまうので言っておくが、ここアルタール大陸では、魔法や科学技術が発展している。
サラが今使ったのは、魔法。
そして、魔法の種類は、変身術だ。
サラの場合、変身したヒトの口調を真似するのは慣れている。
それに、この少年の姿はよく使う。ちなみに、この少年の姿は誰かから借りているわけではなく、
サラが空想で描いた姿だ。
「これなら、狙われる心配、少しは無くなるでしょ?」
くすくす、と笑いながら言う。
「さて、と七時になったね、僕、朝食作るからすぐ食べてね?」
「へーい、分かった」
ドタバタと身支度を大忙しでしたのだった。
再びタティアへ