「最近、依頼来ないねー・・・平和は何よりいいケドさ」

「それを俺に言うな」

話しているのは、上から、サラ・ファレンとディルディス・ライタリー。
彼らの仕事は、バンパイヤハンターと、ティルト(護衛屋)
最近は、バンパイヤ達が暴れるコトも少なく、依頼がここの所一ヶ月こない。
金には困っていないが、どうにも、おかしい。

「一ヶ月も依頼が来ないとさー・・・逆に心配なんだけど・・・」

コーヒーを啜りながら、サラは呟く。

「暇でイヤとか?」

「違う。変に襲って来ないかなぁ・・・ってね」

いくらなんでも、おかしいもの。と繰り返して彼女は言う。

「もしかしたらさー・・・村一つ潰れちゃったり?なんて「助けて!!!」

サラのコトバに重なって悲鳴のような叫びが聞こえた。

ここは、酒場で、ハンター達や、ティルト達に依頼するには向いている。
それを知っていてここに逃げ込んだのが、次のコトバで分かった。

「たっ助けて!!バンパイヤ達が、リリータを襲って・・・!!!」

「貴方、隣町のヒト?バンパイヤ達が、襲撃してきたの?」

もう、コトバも出なくなってしまったのか、ぺたんと床にへたり込んでしまう女性。
よほど、ひどい状況を目にしたのだろう。

「・・・・どんなバンパイヤ?眼が紅かった?髪の毛が銀色だった?」

無言のまま、サラのどのコトバにも、こくこくと頷く女性。

「・・・・ね?言った通りでしょう?兄さん?

「怒ってんのか・・・・(汗」

「いいえ」

「絶対怒ってるって!!!俺を兄さんなんて呼ぶときは、怒ってる時と-----」

「さー。ちゃっちゃと片づけてきましょーか」

「こら。ゼッテー怒ってるだろ。オイ」

「さぁ?自分で考えれば?兄さん?」

にっこり。と天使のような微笑み。だが、それは、第三者から見た様子で・・・。
ディルディスには見た目は天使でも、目が笑っていない堕天使にみえた。

「えーっと。ねえ、被害状況、分かる?」

「む・・・村がバンパイヤだらけに・・・私以外の人は・・・ほとんどが・・・・」

「人口何人くらい?」

「百人近く・・・・それ以上かも・・・」

酒場が硬直した。皆の笑い声が一瞬で消え失せた。

「喧嘩してる場合じゃないね・・・ディルディス・・・」

「相当ヤバイな・・・」

「さぁて・・・鎮魂歌を歌いに行こうか・・・ディルディス?」

「そうだな」

二人は、酒場を飛び出した。

あり得ない依頼